都美術館始末記

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今年の五月に、「第一回清和ひぐらしの里習作展」をムーブ町屋で開催し、お陰様で好評でしたが、場所の関係で神奈川や千葉や埼玉の支部からの参加は限られていました。そこで来年の習作展は上野の都美術館を借りられないものかと思い、習作展終了直後に都美術館の事務所へ行き、可能性を打診してみたところ、来年四月に「第一彫塑室A」が空いているとのことでした。

三月の清和書展と一ヶ月しか離れていないのですが、この機会に都美術館に足掛かりを作っておくのも悪くないかと思い、借りることにしました。しかし使用を許可するに当たっては、資格審査があるとのことで、会の概要や会員の実態や過去五年間の展覧会の実績などなど結構面倒な申請書を書かされて、同人会名簿、五年分の清和展図録、案内状などの資料と共に提出いたしました。

七月に入って美術館から連絡があり、「過去に五回以上公募展を行なっていることが条件なので、あなたの会は残念ながら資格がありません」と言われてしまいました。何でも清和書展や清和選抜書展は「社中展」で、今年行なった「習作展」が始めての公募展なのだそうです。

駄目ならば仕方がないと諦めていた所、十月に入って「多少条件を緩和したから、もう一度申請書を出すように」と言われ、再度申請書に同人会名簿や決算報告書などの添付書類を付けて送付しました。後で聞くと、従来借用していた団体が大量に六本木のナショナルギャラリーに移るため、平成二十年以降かなりの空きが出来て、監督官庁の東京都から稼働率を上げるように指示が出たのだそうで「お宅以外にも条件を満たさない新規の団体があります」と言っていました。

来年四月だと準備の都合もあるし、早く決めて欲しいと再三電話を入れたのですが、「多分大丈夫だとは思いますが、運営委員会で慎重に審査をしているので、もう少し待って欲しい」との回答の繰り返しでした。多分運営委員を務める都庁のお役人が、会員の性格だとか会の継続性などについて色々議論をして、慎重に審議をしているのでしょう。

そろそろ時間切れかなと諦めかけていたところ、十一月十七日に、「東京都美術館運営委員会に諮問した結果、貴団体は適格団体として内定しました。」とのFAXが入りました。まずやれやれと胸をなでおろしましたが、もしまともに公募展をやるのだとすると、今から募集要綱を作って展開して、三月末までに作品が集まると運営委員の皆さんは思っているのでしょうか。

やがて送られて来た書類の中に、「平成二十年度の使用会場の抽選会をやりますから、十二月十四日午後一時までに都美術館講堂に集合して下さい。抽選会に欠席すると平成二十年度の使用権はなくなります。」という文書が入っていました。折角手に入れた権利を剥奪されては困るので、当日出席する予定だった昼食会をあきらめて都美術館に駆けつけました。抽選会とはどんな事をやるのか興味もありました。

 都美術館の使用を許可されている団体には二通りあり、日展とか毎日新聞社とか創玄書道会といった大所は「継続団体」といって開催時期と場所は年間スケジュールとして決まっています。残りの枠を中小の「抽選団体」が分け合う仕組みになっているようです。平成二十年度は三十九枠の空きがあって、三十六団体が抽選に参加しました。書道、絵画、写真、墨絵など多彩な顔ぶれでした。

 事前に設営業者の牧野商会に相談した所「彫塑室は書画の展示には向いておらず設営費用が高くつくので、是非展示室をお借りなさい。賃借料は多少高くても結局安くつきます」とアドバイスを受けましたが、何しろ展示室は一ユニットがセントラル美術館の倍近い面積があり、とても習作展では消化し切れそうもないので、彫塑室の中でも一番使い勝手の良い「第一彫塑室B(ギャラリー)」の六月枠を第一候補に決めて抽選会に臨みました。

 会場への到着順に番号札を渡されて席に就きます。この番号順に団体の代表者が壇上に上ってビンゴの抽選器を回し、転がり出た玉の番号が読み上げられます。私は三番目に抽選し玉の番号は十四でした。壇上に会場と会期を記した三十九枠の一覧表が張り出されていて、抽選番号一番から希望の枠を埋めていきます。やはり展示室の人気が高いようで、十四番目の私の番になっても第一志望の「第一彫塑室B」の六月枠は残っていました。ラッキー。

 抽選番号の最後の方になると、良い場所は殆ど残っていなくて、二団体が使用を辞退しました。美術館の職員が「まだ枠は残っていますがよろしいですね」と念を押したところ、俄然不満が噴出しました。辞退した団体が口火を切ったのですが、これに同調する団体も大勢現れました。

「「継続団体」と「抽選団体」はどうやって区別して いるのか」
「我々はどうすれば「継続団体」になれるのか」
「全団体を含めた抽選会にするべきだ」
「都美術館は公募展対象と言っているのに非公募展の 団体も混じっているではないか」
「公募展の抽選会をやり、残りを非公募展に割当てる べきだ」
「平成十九年度の場所と会期は原則次年度も継続すべ きだ」
「空いた所、変更を希望する団体だけ抽選をすればい い」
「公募展は時期と会場が毎年同じでないと募集に差し 支える」
「ある年は年度末・翌年は年度始めなど成り立たない 」
「もっと使用者の意見を聞いて計画して欲しい」

 展覧会を主催する立場からするとまことに尤もな意見ばかりで、内心大いに同調すると同時に、それでは抽選をやり直すなどと言い出されても困るし、この混乱をどう収拾するのかと大いに興味を持って見守っていたところ、意見が出尽くした頃を見計らって「皆さんのご意見は良くわかりました。平成二十一年度はその辺も考慮に入れて検討するとして、平成二十年度分はこれで決まりとさせていただきます。有難うございました。」とあっさりまとめてしまいました。流石はお役人。

 確かに毎年抽選で会期と会場が変わるのでは、習作展ならともかく、清和書展や清和選抜書展を都美術館に移すのは問題があるなと感じました。展示室の使用料金がセントラル美術館の十分の一以下というのは大変魅力的ではあるのですが。
                           (林閑堂記)

(第一彫塑室A)

(第一彫塑室B)

(ビンゴ抽選機を回す)

(希望の枠を埋めていく)